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東京高等裁判所 昭和43年(行ケ)106号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(争いのない事実)

一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本願発明(名称「石膏の製造法」、出願公告昭和三七年七月二七日、第九、四五三号)の要旨および本件審決理由の要点が、いずれも原告ら主張のとおりであること、引用例には「摂氏七〇〜九〇度で燐鉱石粉末を硫酸と燐酸との混酸で処理し生成硫酸石灰を半水塩の形で含むスラリーを得、このスラリーを、その二倍量以上の摂氏四〇〜七〇度に保つた種石膏スラリー中に供給して接触させ、半水石膏を水和させて二水石膏となす方法」が記載されていること、ならびに引用例において半水石膏スラリーに天然の二水石膏を当初種晶として用いるが、二水石膏生成後は、その生成された二水石膏を種晶として用いることは、いずれも当事者間に争いがない。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 本件審決は、本願発明と引用例の方法における種晶および添加方法ならびにこれに伴う作用効果上の差異を看過誤認したものであり、その点において違法があるものといわざるをえない。以下これを詳説する。

本願発明においては、その種晶として、原告ら主張のとおり、「二水石膏の安定な条件下で燐鉱石を燐酸と硫酸で分解して得られる微細な二水石膏」を使用するものであるところ本願発明の出願公告公報によれば、右に伴い、新しい種晶を常に連続して半水石膏に添加することを必要とすることが認められ、右認定に反する証拠はない。

他方引用例の方法においては、天然石膏を操業開始時のみ使用し、その後は天然石膏により水和された二水石膏を種晶として使用することは、当事者間に争いがなく、かつ、成立に争いのない甲第三号証(引用例)によると、右のような種晶の採用に伴い種晶の中に原料たる半水石膏を連続的に添加するものであることが認められ、右認定を左右する証拠はない。

したがつて、本願発明と引用例との間には、

(一) 種晶および(二)添加方法において、原告主張(編注)のような相違のあることは明らかである。

(編注、原告主張次のとおり

(一) 種晶の相違について

本願発明の種晶は、前記本願発明の要旨記載のとおり、「二水石膏の安定な条件下で燐鉱石を燐酸と硫酸で分解して得られる微細な二水石膏」であるに対し、引用例の方法においては、天然石膏(それが二水石膏であることは争わない)を操業開始時のみに使用し、その後は、この天然石膏により水和された二水石膏を種晶として実際に使用するものである。本件審決が引用例の方法における種晶を天然石膏であるとしたのは誤つている。

(二) 添加方法の相違について

本願発明においては、前記のような種晶を使用するため、新しい種晶を常に連続して半水石膏に添加することを必要とするが、引用例の方法においては、前記のように、既製の二水石膏(原料である半水石膏から水和によつて生成した)を種晶として使用するから、種晶の中に原料たる半水石膏を連続的に添加するという相違がある。本件審決は、このことを看過誤認した。)

しかして、その作用効果についてみるに、……本願発明においては、種晶の二水石膏の結晶は、きわめて微細であり、たとい少量であつても結晶の数が非常に多いため、結局、種晶は、生成する二水石膏の0.01ないし0.1パーセント程度の添加で足り、その添加量は従来法の四分の一ない四十分の一程度であることが認められる。

さらに、<書証>によると、本願発明の方法によると、常に新しい活性のある結晶が連続的に加えられるため、引用例の方法におけるように、種晶の繰返し使用による劣化は生ぜず水和が容易であるとともにこの種晶を核とする石膏の結晶は、二〇〇〜三〇〇μで、その粒度が均一かつ柱状結晶が多く、雑結晶がきわめて生じにくいことが認められ、右認定を左右する証拠はない。

他方、引用例は種晶たる二水石膏の中に、半水石膏を加え、しかも、種晶たる二水石膏は添加すべき半水石膏の少くとも二倍以上を必要とすることが認められ、また、<書証>によると、引用例の方法による結晶は、本願発明の方法に比べ、結晶は小さく、雑結晶も多く存在することを窺知することができる。

以上認定の事実に徴すれば、種晶は、共に同じ二水石膏とはいえ、本願発明と引用例の種晶とは、その成因を異にし、その結果として、作用効果たる種晶の添加量と生成物の品質において著しい相違があるというを相当とする。

(むすび)

三 以上説示したとおりであるから、その主張の点に違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告らの本訴請求は、理由があるものということができる。よつて、これを認容する。(三宅正雄 石沢健 奈良次郎)

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